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アート組曲 〜第一楽章〜 Art suite
日時 2005/12/10(土)〜2005/12/18(日)10:00〜18:00
 
ART suite♪ ギャラリーそらオーナー安井敏恵プロデュース アート組曲◆第一楽章◆2005.12.10-12.18 はじめに 「ギャラリーそら」がオープンして2年と少し過ぎました。その間、若手作家の芸術・文化活動を私なりに応援できないものかと模索していました。今回の応援プロジェクトの発端は、ひたむきに制作を続ける彼女達との出会いです。ジャンルが違う視点で批評し合い、刺激を与え、発展するアート集団を目指して欲しいと期待をかけています。「アート組曲」〜第一楽章〜皆様にどのような音となって響くのでしょうか。楽しんでいただけたら嬉しいです。Galleryそら 安井敏恵
日本海新聞12月14日掲載展覧会という出会いの場所で

「ART組曲 〜第一楽章〜」

出会いというのは突然で、はかないからこそかけがえがないと思う。殊、年を重ねる毎に自分の趣味志向が明確になる代わりに、見えなくなっているもの・ことも多くなっているように感じるのは気のせいではないだろう。
ギャラリー空で開催されている展覧会「ART組曲」は5名の出会いの場所でもある。いずれも鳥取市周辺で制作活動を続けてきた作家であり、30代の女性である。30代とは、ひたすら走り続けることで前に進むしかなかった時期を経て、自らのスタイルをある程度確立しつつある年代であり、立ち止まって周りを確認する余裕が生まれる年代なのではないだろうか。各々のジャンルは異なれど、彼女たちの持つこれまでのキャリアに対する自信と不安、表現に対する真摯さは共通している。
 木工芸に携わる谷口かおりは、「子供部屋」をテーマに、木の玩具によるインスタレーションを制作している。挽き物という伝統分野に身を置き、技術の研鑚を積む一方、ライフワークとしてのオリジナルの玩具は、木の表情とモダンな中にもやわらかさを感じさせる形が、掌に心地よい。
 大理石のもつ素材感に惹かれてモザイク画をはじめたという池田真木は、本展が展覧会としては鳥取県内では初めての発表となる。石を割ることから始まり、数段階のプロセスを経て完成される作品は、独特の暖かみのある風合いを醸し出している。
 雑誌等で活躍する長谷実果は、「夜」をテーマに撮りためた写真作品を発表している。街灯の人工的な光に照らされ、昼間とは全く異なる世界の相貌を撮ることで、全てがつくりもののミニチュアセットであるかのような、奇妙な時空間が作品中に展開されている。
 2年前から銅版画を始めたという小川真記子が描くのは、幻想性を湛えた女性像である。エッチングの緻密な線を生かし、花や蝶、羽といった象徴的モチーフをちりばめた画面は、観る者を異世界へと引き込む魅惑的な力をもっている。
 ひとり旅の日記代わりに写真を撮り始めたという米井美由紀は、5点のカラー写真で会場を構成している。対象に収束されないあてどないイメージは、作家の視点の揺らぎと同時に、現実世界の揺らぎを感じさせ、虚実の境界を写すことに成功している。
 ギャラリー空の初企画展となる本展は、若手作家の支援プロジェクトとして立ち上げられた。オーナー自らがギャラリーを経営していくうちに出会った作家たちに、発表の場でだけなく、個々をつなげ、輪を広げる機会を与えることの意味は限りなく大きい。刺激と共感、勇気と希望。この出会いがもたらすものは、ささやかかもしれないが、きっと未来を明るいものにしてくれる、と信じている。
(赤井あずみ/鳥取県立博物館 学芸員)